季節の変わり目、北国の気温変化に体を慣らすのに難渋しているうちに、
ゴールデンウイークを迎えた。
体の変化。
たとえていえば、血液が冬仕様でゆっくり流れているのが、
春になって、本来流れがはやまらなければいけないのに、
なかなかギア・チェンジができない、といったことだ。
毎日ぐったりとしたまま時間が過ぎて行った。
血液の流れの速さは自分の意志で変えることができず、
思うように動かない中古の体をゆっくり動かしていた。
このもどかしさを何とかしたいと思い、
近くで自然治癒を進めてくれそうな場所を探した。
かもめやから高島方面に向かう海岸沿いに
ホームセンターがある。
広い駐車場のはずれに、海に面した場所があり、
ある晴れた日の午後、そこのベンチに座ってみた。
小樽湾に向かうその場所は、見慣れた港を
違う角度から見ることになるのだが、
なかなか新鮮で美しい。
目の前に、昔ここから石炭を積み込んだと思われる
高架桟橋の後らしきものが残っている。
古びたコンクリートの足台のようなものが2つ。
ひたひたと打ち寄せる海水に洗われたその台に
活気あふれた小樽の昔日の姿がしばれる。
まだ雪が残る向かいの山並みも美しい。
すがすがしい海の空気を吸い込んでいるうちに、
少し体が楽になった気がした。
連休が始まっても、なかなかお天気がすっきりしない。
毎年富山から来てくれる馬好きの女性が、はやばやと来てくれた。
共和町というところに、引退した競走馬を持っている彼女は、
たくさんの人と共有しているという自分の馬に、
今年も会いに行った。
地元富山では、乗馬もしているという彼女、
自宅では盲導犬も飼っているという。
わがやの暴れん坊マルコの愚痴を言っていたら、
彼女が、「こうすればいいのよ」と犬のしつけをおしえてくれた。
目の前で騒いでいたマルコが、彼女の話を耳にしているうちに、
だんだん静かになり、いつもは入らない小屋に、すごすごと入って行った。
これには驚いた。
馬と犬を制している人には、いうことを聞かない犬も、
一瞬にしておとなしくなるんだ。
宿泊のお客さんが眠っている早朝、ふと裏の手宮線跡に行ってみると、
なんと桜が咲いていた。
わが宿の裏の桜が咲いているのを知らずに
うつうつとしている自分に、
人間の狭さを知る。